“ 伽藍堂 Garaando ”

〜 さかうしけいこ が語る東洋医学の世界 〜

勝手に陰陽論20 伽藍堂

すべての荷物が運びだされた40平米弱の、その部屋は驚いたことに小さく感じられた。ガラ〜ンとしてたにもかかわらず・・。手伝いに来てくださった方たちも「あれ、意外に小さいですね。もっと広いと思っていたら・・」とおっしゃっていたのだから、私だけの…

番外編  声(後編)

「今すぐ一緒に鍼灸学校へ行って、入試要項をもらってこよう」と、ヨウちゃんは言った。「鍼灸師になろうかなぁ〜」と私が軽い気持ちでちょっと呟いただけなのに。ぼんやりと思った私の未来は、先細りする真っ暗なトンネルのようだった。お金はどうしたらい…

番外編  声(前編)

「飛んでごらん」。それは、黒茶色の長い翼を大きくひろげた鷲のくちばしから聞こえてきた。ここは小高い丘の上にある広場で、UFOがとまっていても不思議ではないほどの広さがある。その広場の端の、さらに一段高いところに戦没者の慰霊塔がそびえたっている…

雑考9 自分のパターン

その時、母ヒサコは梨を食べていた。人は忘れられない出来事の折には、その状況の細部を妙に覚えているものだ。私の電話にでた母は、梨を食べていたのだ。話の合間に聞こえつづけるシャリシャリという音、そして口にモノを入れて話す時のこもった声。これら…

雑考8 居場所

「この部屋はガランとしているね。落ちつかなくてどこかに行きたくなってしまう」と、友人は言った。本棚と机とベッド。私がOL時代に長らく借りていた部屋にはそれぐらいのモノしかなかった。いつでもどこへでも行けるように・・。こう思っていた気がする。…

繋がりあう世界6 生命力

数年前に父が亡くなった。生と死との境界はなんだか曖昧だなぁと、その時私はぼんやり思った。死んだはずの父の身体は、人肌ほどの暖かさがあるように感じたし肌艶もよかった。爪や髭も伸びる(体内の乾燥により身体が小さくなって伸びたようにみえるという…

勝手に陰陽論19  クールネックリング

スカッとさわやかコカ・コーラ。このキャッチフレーズを覚えていらっしゃる方も多いのではないかと思う。さて、この愛されて100年以上の歴史を誇るコカ・コーラだが、このコカとはコカイン由来だということをご存知だろうか。常習性のあるコカインが使われて…

東洋医学各論19 紫雲膏

先日、ドクダミの手作り酵素をいただいた。白い花が可憐なドクダミには、強烈な香りがある。しかし酵素となったドクダミは、その花の姿を彷彿とさせる清楚で安らかな香りを放っていた。う〜ん!いい香り!生花から酵素への醸造過程でいったい何がおこってい…

繋がりあう世界5 エネルギー医学(フラワーエッセンス)

澄んだ深い青色の空のもと、しあわせな1日になる条件は整っていた。風がひどく強いことをのぞけば。私は庭にでて、ザ・庭師のK氏から樹木のことを聞いていた。「木はね、家と競争するんだよ。張りあって注目をあびようと頑張るんだ。だからこの木の先端はど…

身体感覚を開く6 観察と実験

私がお会いした患者さんたちの中には、90歳をこえてなおイキイキと生活を楽しんでいらっしゃる方たち(以下、総称して「人生の達人」という)がいる。ある時私は気がついた。彼らには共通する観察眼があると。自らを観察する力が秀でている。観察の「観」…

雑考7 マップヘイター

あれは、いつのことだったか。「話を聞かない男 地図が読めない女」という本がはやったのは。男女の脳の使い方の違いに着目した内容だった記憶がある。最近になって私は、ハタと気づいてしまった。わが母ヒサコ(87歳)は、話も聞かないし地図も読めないとい…

東洋医学各論18  瘀血(オケツ)

北国では、季節のうつりかわる様がはっきりと目にみえる。雪どけの季節になると、太陽の熱と地熱とが、すっぽりと街をつつんでいた固い雪をアッという間に溶かして、赤や青といったカラフルな色のトタン屋根やアスファルトの道が現れて、街の模様が一変して…

雑考6 時と記憶

我が家の上空にマイナス25度の寒気団がやってきた。木枠にはめられた平坦な窓ガラスは、万華鏡でうつしだされる模様にも似た、透明な雪の結晶が重なりあい、その厚みを増す。外は八甲田山のような猛吹雪だ(いったことはありません)。 私は用があって、凍え…

雑考5 痛み2

災難は前ぶれもなくやってくる。お正月気分もぬけかけた頃のある夜、87歳の母がなにも障害物のない畳の上で転んでしまった。手をのばした拍子にバランスをくずし、トコノマと畳との段差のカドに脇腹から背中を打ちつけたという。奥の部屋にいて現場を見てい…

東洋医学各論17 腎3

いつまでも鮮明に心に残っている言葉がある。あれは、私が鍼治療をはじめて受けた20代半ばの、隠れ家のような小さな治療所での先生が発した力強い一言だった。「あなた、まずは身体よ」。それ以来私は、自分自身に、そして私の患者さん達にも、おりにつけ呪…

東洋医学各論16 痛み

この痛みさえなくなるなら、他は何も望まない・・。痛みを伴う病気で苦しまれた方の多くは、このように思われた経験があるのではないだろうか。それほどに痛みは、苦しみを与え不安をあおり前向きに考えることを難しくする。 「なんで痛むの」「どうやったら…

繋がりあう世界4 マクロの視点

最近、足首の捻挫や指の骨折といった症状の患者さんたちを診ることが多い。手や足といった身体の末端で起こる不調は、どれほど小さな部分の損傷であるにしても、いずれも身体には重要なのだと思いしらされる。足の小指の骨折は、両足で均等に体重をのせて立…

東洋医学各論15 水は1日2リットル?!

「日が暮れるのが早くなりましたね」患者さんの言葉に、私は薄暗くなった治療室の時計を見た。まだ5時なのに、そろそろ夜モードだ。熱と光のビームで野蛮なまでにアスファルトを照らしつづけた太陽を時に疎ましくも思えた夏。その夏がゆっくりと終わりを告…

身体感覚を開く5  曖昧な感覚

私たちは、目・耳・鼻・舌・皮膚を通して世界を認識している。視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の、いわゆる五感と呼ばれる感覚器をツールにして。この五感の中で、最も保守的といわれているのが味覚だという。子供の頃の好き嫌いは、そのまま大人になっても続…

身体感覚を開く4 変化

時代は、そのスピードをあげて進みだした。こう感じている私に、会社を経営している患者さんは、ふとおっしゃった。 「組織は時代の流れについていけない。時代はいつも、思う以上に変化している。」 さらに「大きな組織になればなるほど、それを維持してい…

雑考4 養生について

東洋医学の時代は来るのだろうか? 前回のブログを書いていたら、東洋医学って本当にすばらしいなぁと思えてきた。そしてその真髄は一般のみなさまに浸透しているのだろうかと考えこんでしまった。 私が鍼灸学校へ通っていた頃はバブルの絶頂期。「これから…

東洋医学概論7 中医学と東洋医学

漢字は、モノの形をまねて作られた象形文字だという。 「中」という文字は、放たれた矢が当たるべき的(マト)をかたどって生まれた。真ん中を射抜くためのマトを表す。訓読みでは「アたる」と発音する。(注:旗竿の吹流しを描いた象形文字という説が主流)…

身体感覚を開く3  身体と街づくり

治療家の私は、患者さん達の気づきにハッとさせられることがある。 今回は、ずっと心に残っている会話のひとつを取りあげてみたい。 彼女は、建物の保存や街づくりといった多岐にわたる活動の先駆的なリーダーで、私の治療を受けていただいてから、かれこれ…

雑考3 死に至る5つの段階(エリザベス・キューブラー・ロス) 

こんな世界になろうとは、夢にも思わなかった。 コロナウイルス、戦争、原発占拠、地震。。 次々に押しよせる現実が強烈すぎて、私の想像力が追いつかない。まるでディストピア小説のただ中に投げ込まれてしまった感じだ。悪い冗談であってほしい。 そのうえ…

繋がりあう世界3 間(マ)

人生は出会いに満ちている。 昨年私は1冊の本と出会った。タイトルは「紛争地の看護師」、作者は白川優子さん。 彼女は7歳の頃に見たテレビ番組で「国境なき医師団」の存在を知り、その医師達に憧れのような気持ちを抱いたという。中学・高校時代の彼女は…

勝手に陰陽論18 気・血・津液(き・けつ・しんえき)

雪、雪、雪。 「小樽の街角でよく見かけるオンコの木。その赤い実がタワワになると雪の多い年になる」とか、 「猛暑の夏の後には大雪の冬が来る」とか、チマタでは言われていた。 そのとおり、ひさびさに冬の厳しさを噛みしめた今年の幕開けだった。 そして…

東洋医学各論14 五行論からみる臓器と感情

治療家の私には、患者さん達の様々なエピソードを聞かせていただくという、ありがたい特権がある。その中のひとつを紹介したい。 あの当時その方は82歳。横浜からご自分の運転で私の治療所へ来てくださるダンディで陽気なご老人だ。ある時、親友のお通夜へ行…

東洋医学各論13  五行からみる食養生と薬膳

色彩豊かな秋が深まって冬に向かっていくと、外界の景色は次第に色褪せていく。こんな季節にあって、橙色に輝く柿を見かけるとなんとなく嬉しい。枯れていく風景の中で力ある暖色系のオレンジ色は、元気を与えてくれる。 秋はやっぱり柿でしょ! 柿くへば鐘…

東洋医学概論6 陰陽五行論

猛暑に見舞われた今年の夏の小樽。秋の紅葉は今年もまた綺麗だろうと期待した。夏の暑さが厳しい年に、木々は綺麗に紅葉すると記憶していたからだ。しかし我が家近隣の紅葉の美しさはイマイチだ。そこで紅葉が美しくなる条件を調べてみた。 夏に十分な日照時…

東洋医学各論12 脾

稲が実って田んぼ一面が黄金色に染まる季節がやってきた。先日、空高く晴れわたった青空のもとで、黄金に輝く稲穂の大地を見た。黄色い大地。そんな言葉が頭に浮かんだ。 今回は、黄色や土に象徴される人体の臓器、五臓六腑の五臓(肝・心・脾・肺・腎)のう…