“ 伽藍堂 Garaando ”

〜 さかうしけいこ が語る東洋医学の世界 〜

勝手に陰陽論9 黒

わが故郷、小樽。その小樽へ帰る楽しみのひとつに、余市にあるゲストハウス「はれるや 」さんで開かれるバーベキューパーティがある。

はれるやのママさんをはじめ、プロの料理人たちによる選りすぐりの食材の、素材を生かした粋な品々。そして惜しげなくバンバン栓が抜かれる、入手困難と噂高きナチュールワイン。

優しい夜風に吹かれ、バックに流れる音楽に身体を軽く揺らしながら、近場の人たちとポツポツと話しては、バーベキューをつまみワインを少し。。夕暮れ時から終電までの間、そこここで焚かれる火に燻される私は、いつもとは流れ方が違う時を、ちょっぴり酔いながらも堪能する。

 

それにしても、バーベキューが美味しい。ママさんにそういうと「極上の備長炭なのだ!」と。

そうか、炭によってもこんなに味が変わるんだ。。。

 

今回は、炭焼きが美味しいわけを考えつつ、炭の色でもある「黒」の特質について考えてみたい。(注:炭には黒炭と表面に白い灰のつく白炭がありますが、ここでは黒色として扱います。)

 

木を燃やすと白色の灰となり、灰は2度と燃えない。炭は、空気と結合できない状態(蒸し焼きなど)で木を燃やして(黒炭は400℃〜700℃、白炭である備長炭は1000℃以上)作られるという。木の中の水蒸気やガスが抜け落ち 、炭素だけが残って黒色の炭となる。

炭は、ガス火の4倍以上の赤外線を発し、深部へと浸透することができる輻射熱によって安定的に表面を均一に素早く焼き上げ、うま味成分を食材の中にギュッと閉じ込めることができるという。

 

炭は木の持つ雑多な要素を除きさり、炭素というエッセンスのみを内包する。そしてその炭で調理された食材も、その食材の持つうま味を内蔵する。

また炭には不純物を吸引して離さない力があるため、脱臭、浄水、浄化などにも役立つ。

このように凝縮されたエッセンスを内側に封じ込める力を有する物質は、黒い色を呈する。

あらゆる色を混ぜてできる黒色は、あまねく色のエッセンスをその内に納めており、陰陽論でいうところの「陰」を象徴する。

(ちょっとおさらい:陰とは内に向かって集約される力で、凝集して形を作り安定する。陽とは外に向かって拡散する力で、放出して流れや動きを生む。色はあらゆる色を含む白に象徴される)

 

一般的に黒(ブラック)といえば、とかく悪いイメージになりやすい。

最近では「〇〇会社はブラックだって!」とよく聞くようになった。労働条件が悪い会社をさして、ブラック企業という。

勝負の世界では、白星は勝ちを、黒星は負けを意味する。

犯罪においては、白は潔白で無罪を表し、黒は有罪。

白はでビンゴ!  黒は X でブーって感じ。。

黒は闇を象徴的に表すため、「未来は真っ暗」と言ったなら、それは絶望を意味する。

また恐れ、孤独、沈黙などもイメージされる。

 

こういった暗いイメージの一方で、こんな意味もある。

・威厳、神聖

正装の場面で用いられる黒(タキシードや喪服)は、厳(おごそ)かで神聖な意味あいを帯びる。

・高級、派手、上級

私が中華料理を習っていた頃の話であるが、先生に「中国では黒は派手な色とされていて、椎茸や黒キクラゲといった黒の食材はとても大事に扱われる」と習ったことがある。白キクラゲより黒キクラゲの方が高級品になると。ナマコも中国では「黒いダイヤ」と呼ばれ高値で取引されている。

また武道において黒帯は、白帯より上の階級を表す。

・安定、落ち着き、静寂

灯りを消して真っ暗な中で寝る方が、薄明かりの光が灯された部屋で寝るよりも、圧倒的に眠りは深く、身体が休まる。深い闇(黒)が人体に深い安定と落ち着きを与える。

 

このように黒は、恐怖、脅威、敗北、邪悪といった暗いイメージと

威厳、神秘、高級、安寧といった肯定的な側面とをあわせ持つ。

 

エネルギーの視点から黒を捉えると、

ブラックホールのように強烈な吸引力で、

ギュっと内に向かってエッセンスを封じ込める力を持つ。

それゆえ囲碁碁石は、黒のサイズが白より大きく作られているそうだ。同じサイズだと肉眼では黒が小さく見えてしまうから。

またファッションでは、ボトムを黒にした方が白っぽい色よりも脚がスリムに見える。

これらは、黒色の持つ内に向かって閉じ込めるエネルギーが働いているためだ。

 

あらゆる色を混ぜてできる黒。

地味にも派手にもなりうる色。

邪悪にも神聖にも。

恐怖にも安心にも。

 

黒色に象徴される陰陽論における「陰」には、善悪の2元論をはるかに超えて、清濁併せ吞むというような強い力が込められているかのようだ。

 

陰の力。

男女の性別でいうなら、女性を指し、母性はここから生まれる。

天と地でいうなら、大いなる地球の大地であり、

空と海でいうなら、生命が誕生した海。

 

闇が得体の知れない奥深さを感じさせるように、

漠とした深遠さの中で際だつ強さを持った陰の世界は、なんとも果てしがないように思えるのだ。

 

 

<おまけ>

民間療法

日本には、黒炒り玄米茶、梅の黒焼き、ナスのヘタの黒焼きといった黒炒り、黒焼きにする文化がある。ミネラルや成分、エネルギーを含み、その食材のエッセンスを安定した形で収蔵するもの。黒の持つ力に想いを馳せつつ、ぜひ一度お試しあれ。

黒炒り玄米茶ー腸内の有害物質を排泄、腸内環境の改善、免疫力や肝・腎機能アップ

梅の黒焼きー疲労回復、風邪の予防、解毒や抗酸化の作用、冷え性改善など

ナスのヘタの黒焼きー虫歯、歯槽膿漏、歯肉炎、痔

  

<後記>

 ブログを読んでくださる患者さん達のもっとも多い感想は、これです。

「陽が良くて陰が悪いと思っていました。でも、そうではなかったのですね・・」と。

そうなのです。

陰の世界の奥深さと果てしなさの上に、躍動し輝ける陽の世界がある。

陰陽を善悪という2元論ならしめているのは、たぶん解釈の問題。

人間の性格上の欠点が長所にもなりうるように、見方や解釈によって逆転するのです。

そこに陰の世界がある。ただ、それだけ。

そこここで目にする黒色を通して、ちょっとだけでも陰の世界の深みへと堕ちていっていただけたなら嬉しいです。 

 

 

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 メキシコ、トゥルム。満月のもとで瞑想したカリブ海の浜辺にて撮影