“ 伽藍堂 Garaando ”

〜 さかうしけいこ が語る東洋医学の世界 〜

勝手に陰陽論11 トリッキーな身体感覚 ほてり

身近な健康法である入浴。

昨今のシャワー派の台頭を聞くにつけ、私は入浴の恩恵について日々研究している。その成果もあって、体感で大体のお湯の温度がわかるようになった。ま、あってもなくてもいい能力だけどね。

 

それにしても先日はいったお風呂は、熱すぎた(約45℃)!

ヒートショックプロテインHSP)入浴法みたいだ。

<注:ヒートショックプロテイン入浴とは、身体に熱のストレスを与えることで、細胞を修復する時に働くタンパク質(HSP)を増やし、免疫をあげることができるとされる入浴方法。設定温度は40℃〜42℃>

浸かっているうちに、不思議な感覚に襲われる。

熱いはずなのに、皮膚の表面はかえってピリピリと冷たい。

熱いのか?冷たいのか?

 

そういえば昔もこんな逆転現象があったなぁ。。

子供時代、海で泳いでいて冷えきった時だ。

唇もブシ色(注:北海道の方言で、どす黒い紫いろ)になって、ガタガタと震えて海からでるのだが、冷たいはずの海の中(水温18℃以下)の方が陸地(気温20℃以上)よりも暖かく感じたのだ。

寒いのか?暖かいのか?

 

今回は、このトリッキーな身体感覚について考えてみたい。

 

更年期の女性が襲われるホットフラッシュ(顔面、頭からダラダラと滝のように汗をかく症状)。またはベッドで寝ている姿勢から布団を剥いで足を上げて壁につける。そうやって冷やさないと寝れないといった足の火照り。

これらは陰陽の不調によっておこる。

上にあがる性質を持つ陽の気が上半身、とりわけ頭部に昇ったまま下におりていかない。

頭痛、めまい、耳鳴り、イライラ、不眠などといった更年期の不調は、この陰陽の気の流れの分離によるところが大きい。

 

 更年期については、こちらも参照。

garaando.hatenablog.com

 

そもそもだ。

実質臓器の内臓や脳は絶えず活動しているため熱を生む。そのため実質臓器が多い上半身とその周辺はこの熱の影響で体温も高いが、実質臓器が少なく管腔臓器で占められる下腹部や手足の体温は上半身と比べて低く、冷えている。

 

東洋医学では、人体にはこの冷え(陰)と熱(陽)とが分離することなく巡りあうシステムがあるという。

月(陰)と太陽(陽)は、それぞれが一つ所に留まることなく互いに影響を与えながらも絶え間なく移動する。刻々と夜が更けて必ず朝がくるように。

人体は小宇宙なのだから、このような陰陽のバランスある流れが身体の中に備わっているのである。

 

さてこのシステムとは?

ざっくり言うと、人体には気の通り道である経絡(けいらく)という12本のラインが縦に走っている。

これらには陰陽の2種類が6本づつあり、陽のラインは身体の上から下へと、陰のラインは下から上へとエネルギーを運ぶ。

(注:陽は外・上へ、陰は内・下へ向かうエネルギーである。しかし宇宙や自然界は開放系でなく円環系であることを考えると、上へ向かった陽の気は限界点に達して下へ降りてくることになる。東にずっと行けば西になるように。足の下にも天があるように。

天と地の間に位置する人間は、天から降り注ぐ陽の「気」を受け取り、地から陰のエネルギーを「味」で受け取るとも言われている。

それゆえ人体では、経絡の陽ラインは上から下への方向で、陰ラインは下から上へと向かう流れに乗ってエネルギーを運ぶ。

天・地・人が組み合わさった生命エネルギーが、互いに影響しながら、流転し循環するという自然界のシステムなのだ)

 

つまり、身体の中で陰陽のエネルギー双方が健全に流れる時、それらは身体の上部と下部とに分離されることはない。

 

足がほてる方は言う。「冷え性じゃありません。暑くて暑くて、くつ下なんて絶対はけない」と。

しかし、東洋医学においては「火照り:熱」は「冷え:寒」の極まった状態とされる。(注:中国医学の古典「傷寒論」では、自覚できる冷えは「寒」、他覚的な冷えを「冷」という)。

足のほてりの場合は、更年期の不調の原因と同様、上半身に「熱」、下半身に「冷え」が偏ることが多い。

<注:熱と寒(冷え)が複雑に絡み合うケースとして、身体全体の内部は冷えているが体表全体が熱い場合や、躯体は熱いが、手足が冷えている場合など熱と寒(冷え)は、いくつかのパターンで混在している>

 

さらに陰極まりて陽となり、陽極まりて陰となるのだ。

つまり冷え(陰)が極まると、ほてり(陽)に反転する。

そのため、ほてるから冷やすと、さらに冷えが入り、より一層ほてるという無間地獄の扉を叩くことになる。

 

なんとトリッキーな身体感覚!

 

症状とは、細胞たちの表現であり、

繰り返し現れる症状には、その奥に時の集積がある。

そして症状がいったん取れることと、病気が治ることとは必ずしもイコールではない。

 

最後に長年の足の ほてり が実は冷えだったことに気づいた私の患者さんの、その独自のメソッドをご紹介させていただく。

 

Aさんは、およそ14年間、足の ほてり が悩みだったという。昼は仕事での車による移動がメチャクチャ多い。クーラーをつけて特に熱い足をガンガン冷やしていた。昼間はこうして過ごし、夜寝ると足が熱くて目が覚め、眠れない。バケツに氷を入れた水をはったり風呂場へ行って、足を冷やす。とにかく熱いから冷やす。この冷やし作戦は5年以上に及んだ。

2年ほど前に、それは冷えの極まった状態だ!と私に言われ、驚きながら作戦変更。クーラーを極力避けるように。そして暑かったこの夏。移動する車内はクーラーをかけて、足には後部座席に置いてあるモコモコブーツを取り出して必ず着用。常に足を温める行動をやってみたという。すると、今までの火照りがとれてきたのだそうだ。名づけてブーツ作戦。その後もスムージーを飲んだ日は足がほてるなど独自の研究を続けている。

いかがだろうか。

斬新なる作戦に、賛美を送りたい。

 
遊びココロを持って、自分を知り、自然を学ぶ。

健康へと向かう道のりの先には、希望がみえてくるはずだ。

 

<後記>

北国育ちの私は、真冬に手がかじかんで冷たくなると自分の首の後ろに手の平をあてて暖をとっていました。手が暖かくなると喜んでいると、次第に首が冷たくなるのに気づきます。

暖かいのか?冷たいのか?

この両極が淘汰し合う感覚を遊びながらよく味わっていたものでした。

どこに視点を置くのかによって身体感覚も変わります。

冷えていると無感覚になってしまうことが多いため、熱い方が感じやすく、冷えに気づかないのかもしれません。

その熱さ(暑さ)の裏に、奥に、下に、冷えは潜んでいないのでしょうか?

今一度検証してみていただければ嬉しいです。

 

 

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ブラジル、グアナバラ湾の海底油田の採掘現場にて撮影

臨床例としてAさんのご協力を得て掲載