“ 伽藍堂 Garaando ”

〜 さかうしけいこ が語る東洋医学の世界 〜

勝手に陰陽論16  気 (キ)と 物(モノ)

私の好きなフレーズのひとつに「 気 動じて 物 生ず」というのがある。

気が動けば自ずから物が形づくられる、という意味だ。

 

今回はこの 気(キ)と 物(モノ)との関係を人体の五臓六腑の五臓に当てはめて、陰陽論で考えてみたい。

 

陰陽論についてはこちらを参照 

garaando.hatenablog.com

 

garaando.hatenablog.com

 

陰陽の視点で考えてみると、

気:キ は外へと拡散する動的エネルギーを有する陽であり、目に見えず、

物:モノ は内へと集約されて物質(実体)を形づくる陰であり、目に見える。

 

これを踏まえた上で、五臓六腑の五臓について考えてみる。

西洋医学でいうところの五臓(肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓)は実質臓器(広義のモノ)を指すのに対し、東洋医学では実質臓器に加えてその臓器による働き(広義のキ)を含む。よって西洋医学五臓には、臓の字がついているが、東洋医学のそれには肝・心・脾・肺・腎と臓の字がない。

腎を例に考えてみると、腎臓という実質臓器は目に見える形の実体(モノ)である。そして腎臓が持つ生命力を発動させるための働き(キ)には、成長、発育、生殖、老化といった分野がある。その働きゆえ、腎は、骨・歯・耳・生殖器といった器官とも関連が深い。

腎と東洋医学でいう時、これら腎にまつわる器官との関係性にも目を向ける。つまり、腎臓という臓器そのモノに加えて、関係器官を繋ぐ働きをも含む機能全般を網羅する。

腎 = 腎臓本体 (モノ)+ 腎にまつわるすべての働き(キ)となる。

実質臓器は実体(モノ)であり、目に見える陰。

その働きは 動的なエネルギー(キ)であり、目に見えない陽。

この陰と陽が合わさってはじめて生命活動が営まれる。

 

腎については、こちらを参照! 

garaando.hatenablog.com

 

気の医学 といわれる東洋医学において、五臓の捉え方においても気の重要性がみてとれる。

 

気動いて、物生ず。

目には見えないエネルギーが、モノを生む。

自然界における生命エネルギーが、物を、形を、実質臓器を作り、そしてそこに生命力が宿る。

 

意図や意識が何事においても重要なのは、それが現実を作ってしまうから。。

  

その一方で、キ(陽)がモノ(陰)より大事なわけではない。

物質、形といったモノがなければ、そのキ(エネルギー)を感じることができない。

私たちは、陰であるモノの力を借りなければ、その本質がわからない。

スィーツを食べてはじめて、その甘さを味わうことができる。

芸術作品を見ることによって、そこに宿る作者の情熱を感じることができるし、

感謝の気持ちも言葉によらなければ、伝わらないことも多い。

 

形あってはじめて、届くものがある。

  

また目には見えない技術もそれを表現するためには、道具や実体を必要とする。

スキーというスポーツもスキー板という道具がなければ、その楽しさは味わえない。

音楽においても楽曲があって、それを奏でる演奏家たちの技量がわかるのだ。

 

そこに気が動いて、モノが生じる。

そしてモノによってはじめて、目にはみえない世界が広がっていく。

 

陰と陽。

身体という乗り物と精神。

肉体と身体感覚。

言葉と意味。

芸術作品と才能。

これらが合わさって、さまざまな営みが生まれるのだ。 

 

この陰と陽との関係性に目を向けると、

気というエネルギーのありかが見えてくるのかもしれない。

 

 

(おまけ:五臓六腑における臓と腑との関係)

五臓の臓とは、字のとおり蔵するという意味合いの、貯める器。内側にためこむ陰。ここにはその臓器が持つポテンシャルが貯蔵されている。

六腑の腑とは、胃や腸に代表される中空の器官で、流し動かす器官である。外部へと押しだす陽。

内臓である五臓六腑も、陰陽の力が合わさって機能している。

 

(後記)

気(陽)とモノ(陰)との関係は、相反するものでありながら、コインの裏表のようなもの。どちらか一方が欠けても成り立たず、一方だけを取り出すことはできません。

このように考えてみると、気であれモノであれ、いずれか一方へのアプローチであっても全体に影響を与えます。

モノを整理することでエネルギーの流れを変える断捨離のようなモノから入る方法論 と

意図や意識を高めて現実を変えていくキから入る方法論。

どちらも真なり。。

 

色即是空、空即是色。

 

気とモノとの間に結ばれる関係性に気づいていくことは、

単なる方法論ではなく、真理の追求に繋がるのではないかと思っています。

 

 

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人形作家 石田節子氏の作品「桜花」。 自宅にて撮影