“ 伽藍堂 Garaando ”

〜 さかうしけいこ が語る東洋医学の世界 〜

身体感覚を開く2 響(ひび)き

私が初めて印象派の画家クロード・モネの睡蓮を間近に見たのは、午後の日差しが心地よい、晴れわたった秋の日だった。そこはニューヨーク近代美術館、通称MoMA。 話は、20年以上前にさかのぼる。当時の私は、通っていたアメリカのヒーリングスクールの授業を…

繋がりあう世界2 発酵と酵素

築93年を経た木造の我が家が、私の小樽での治療所である。さてこの家を掃除してみると、これがもう笑っちゃうほどに小さき生物達の足跡をたずねる旅になる。 いたるところに蜘蛛の巣あり!四隅はもちろんのこと、戸棚の表面にもうっすらと。ちょっと高みを見…

勝手に陰陽論17  見方によって世界は変わる

ファンというのは、なんてありがたいのだろう。 患者さん達の話をきく度に、こう思ってきた。そしてその熱狂ブリは、いつも私を幸せにさせてくれる。 モータースポーツの F1世界選手権を欧州へ観にいくためだけに働いている気がする。 羽生結弦選手(ゆず君…

勝手に陰陽論16  気 (キ)と 物(モノ)

私の好きなフレーズのひとつに「 気 動じて 物 生ず」というのがある。 気が動けば自ずから物が形づくられる、という意味だ。 今回はこの 気(キ)と 物(モノ)との関係を人体の五臓六腑の五臓に当てはめて、陰陽論で考えてみたい。 陰陽論についてはこちら…

東洋医学各論11  経絡(けいらく)

ふと幼い頃の風景が浮かんでくることがある。 先日も懐かしの遊び、炙(あぶ)り出しを思い出した。みかんの絞り汁で紙の上に絵を書いて乾かす。火で炙ると滲(にじ)みながらも秘密の絵がぼんやりと浮かびあがる、炙り出しを。 こんな事を思い出したのも、…

雑考2 時について

「ベランダに転がっていた球根を植えてみたの」と友人は、2つの小さな鉢を見せてくれた。その友人を訪ねる度に、それぞれの鉢からは芽が出て背丈が少しづつ伸びていった。とうとう1つはヒヤシンスの可憐な白い花が咲いた。もう1つは背丈も小さくいまだ花…

東洋医学各論10  衛気(えき)

ここ数年の私は、滅多にテレビを見ない。 時折テレビで話題の政治家たちを拝見する機会があると、その内容よりも気になることがある。 お化粧を落としたこの知事の素顔は、ホントはどんな?? 顔色の悪い老齢のこの方は、本当にツラの皮が厚いの??皮膚も厚…

身体感覚を開く 皮膚

私の好きな映画のひとつに、個性派女優ウーピー・ゴールドバーグ主演の「天使にラブソングを」のコメディ作品がある。この映画の中で修道女になりすました彼女が、爪をたてて黒板を引っ掻き、その強烈な不快音によって騒がしい生徒達を黙らせるシーンが冒頭…

東洋医学各論9  病気の原因と身体感覚

北国では、一夜にしてその景色が変わる朝が来る。 吐く息がほのかな煙のように拡がる朝。カーテンを開けてみると、葉っぱを落としきった裸ん坊の木々がおりなす、昨日までの乾いた土気色の風景が、発光するような雪色に染められる。 とうとう冬だ。また冬の…

東洋医学各論8 肺

憂いあふれる和風美人画の作者、竹下夢二。 彼の描く女性像は、色白の瓜実顔で髪の毛が多めの痩せ型。そして独特の情感に溢れている。 背丈はスラッとしているから声帯も長いはず。それゆえ声は低くたぶん小さい。このようなタイプの女性がもし病いを患うと…

繋がりあう世界 腰痛

テレワークの推奨により、在宅で仕事をする人が増えた。 ある患者さんは、会社での自在に動く座り心地の良いイスではなく、自宅の小さなダイニングテーブルとイスで仕事をしなければならなくなった。 彼女はかなりのハードワークをこなしていて、慢性的に腰…

東洋医学各論7 心(シン)

眠れぬ夜。時計の針は、その速度を異様に落として刻みこむ。 しかも自殺は明け方に多い。 自分の痛みとは係りなく、陽がまた昇り、現実世界が再び立ちあがってくる頃に。 街並を一斉に照らしはじめた太陽の光が、身動きできずに暗闇に浸っている心を打ち砕く…

勝手に陰陽論15 陰極まりて陽、陽極まりて陰

街を移動していると気がつく事がある。 「足先がドアに挟まれないように注意」。電車内でドアに張られていた標語が目に止まった。 その上には「戸袋に注意」という表示がある。実際に子供が腕を挟まれているのを見たことがあるので、危険なのだなぁと思うよ…

東洋医学各論6 津液(しんえき)

至福の時といえば、みな様にはどんな経験がおありだろうか。 私にとってのそれは、メキシコへ旅した時でのこと。 マングローブの林が生い茂る水面。ひとたび何かを浸してみれば、どんな物でも中身まで透き通ってしまいそうな、そんな限りなく透明な薄いグリ…

東洋医学概論5 虚実

「あなたを花にたとえて、その絵を書きなさい。」 これは、私が入学したいと思った学校の申請書に書かれていた一文である。エネルギーワークを学ぶため、日本で8年ほど通った学校の。 困った。。好きな花はいろいろあれど、自分がどんな花かなんて考えたこ…

東洋医学各論5 肝

春になると肝臓が動きだす。 草木が芽吹きだし、小さな蕾が膨らみだすように。 冬眠していた動物たちが目覚めるように。 エネルギーを貯蔵する性質を持ち、冬に活躍する腎。その腎から、伸びやかに拡がる力を持つ肝へとバトンが渡された。 季節のめぐりに呼…

雑考

小学生か中学生の頃に、考えていたことがある。 私が育った小樽の街では、市内の一定の区域内に住んでいる子供達が同じ小学校に通い、そこでクラス分けされる。小学校は確か1学年5クラス。1クラスでは男子が女子より少し人数が多い。私の学年だけではなく…

気!流れる身体1 腕

アンティークな円錐ドーム型の鳥カゴを想像していただけるだろうか。 私は即座に、背骨と胸椎と左右12本ずつあるあばら骨とが接合してできる人体の骨格、すなわち胸郭を思い描く。内臓を納めて保護する、そんな場を作るための胸郭を。 今回は、この骨ででき…

勝手に陰陽論14 ダウンサイズ

どこか知らない国へ行ってみたい。 子供の頃から、そう思っていた。 最初に訪れたのは中国。トイレットペーパーの芯を抜いて潰しては、ペーパーのカサを小さくしてスーツケースに押し込み持参した。北京の語学学校に通いながら、そこを拠点に時々旅に出る。 …

勝手に陰陽論13−1 目からウロコが落ちる

時々、ピタッとハマる言葉のすばらしさに驚くことがある。 「目からウロコが落ちる」という表現もそのひとつ。 調べてみると英語にもあった!「The scales fall from the one's eyes」というらしい。 お国を問わずに存在する「目からウロコが落ちる」という…

勝手に陰陽論12 豆腐と太平洋

冬を迎え鍋料理の美味しい季節がやってきた。 湯豆腐を作るため土鍋に豆腐を入れて煮えるのを待つ時、たまに思い出すことがある。 あれは、私が精神科医であるS医師のもとに足しげく通っていた頃の話だ。フロイトに詳しいS先生が話された内容のいくつかを、…

ハリ様への道2 出会い

人生を変えてしまう力を持つ出会い。 その出会いには、いくつかのタイプがあるように思う。 まずは、出会いのはじめからピンとくる場合。ピンッ!てね。 あるいは後になって、予期せぬその影響の大きさに驚きつつ、カウンターパンチのようにしみじみとじんわ…

勝手に陰陽論11 トリッキーな身体感覚 ほてり

身近な健康法である入浴。 昨今のシャワー派の台頭を聞くにつけ、私は入浴の恩恵について日々研究している。その成果もあって、体感で大体のお湯の温度がわかるようになった。ま、あってもなくてもいい能力だけどね。 それにしても先日はいったお風呂は、熱…

東洋医学概論4 身体感覚を開く

あなたの座右の銘は何ですか? そう聞かれた時を夢みて、わが座右の銘を決めてみた。かけだし鍼灸師時代の25年以上も前のことだ。その後ずっーと今の今に至るまで、ただの一度も誰からも聞かれたことがないです、ハイ。 私の座右の銘は「押してもダメならひ…

勝手に陰陽論10 内と外

ここ数ヶ月、制服姿の学生で占められる長蛇の列が日に日にのびる店がある。 タピオカドリンクの販売店だ。 タピオカとは、熱帯地方で栽培されるイモの一種であるキャッサバを原料とし、その根茎から作ったデンプンのこと。 流行りに乗っているのは、真珠大で…

勝手に陰陽論9 黒

わが故郷、小樽。その小樽へ帰る楽しみのひとつに、余市にあるゲストハウス「はれるや 」さんで開かれるバーベキューパーティがある。 はれるやのママさんをはじめ、プロの料理人たちによる選りすぐりの食材の、素材を生かした粋な品々。そして惜しげなくバ…

東洋医学各論4 腎2(腎精)

友人からローズオイルをいただいた。 数多のバラの中でも「香りの女王」と呼ばれるダマスクローズの精油を。 フタを回してみると、一瞬にして視界に鮮やかなピンク色のバラ園が広がる。 柔らかくも包み込むように芳香を放つオイル。 この1mlを蒸留抽出するの…

勝手に陰陽論8 繋がりあう世界

信じる力。 それはしばしば現実を変えてしまう。 今回は、その具体例をご紹介したい。 それは偽薬(ニセグスリ)。 これを飲んで得られる効果をプラシーボ(プラセボ)効果と呼ぶ。 砂糖でできたアメ玉であっても、この病気の特効薬だと信じて飲んだ場合、ホ…

東洋医学各論3 腎

春が来た。(来たの?本当に?異常に寒い。。2019年4月末@東京) 北国では雪がとけ、長い冬を土中で過ごした種子や球根が芽吹いて花を咲かせる季節が、また巡ってきた。 さて、このタネのように生命体のエッセンスを内包している臓器が、我らの身体にもある…

勝手に陰陽論7 ハーモニー

さる雛祭りの日に、大好きな大好きな友人の偲ぶ会に参列させていただいた。 傑出したアーティストだった彼女らしさが溢れる素晴らしい会で、準備された方々の愛情の深さにも感銘を受けた。49日を経てもなお出席者の多くの方達が大泣きし、互いに彼女のかけが…