築93年を経た木造の我が家が、私の小樽での治療所である。さてこの家を掃除してみると、これがもう笑っちゃうほどに小さき生物達の足跡をたずねる旅になる。
いたるところに蜘蛛の巣あり!四隅はもちろんのこと、戸棚の表面にもうっすらと。ちょっと高みを見渡せば、手の届かぬところのソコカシコに。この作品を作ったであろう蜘蛛の姿はいっこうに見当たらぬ。一体何処へ?
わらじ虫達はどこから湧くのかわからないが、春の陽気に誘われて我先にという感じでこぞって水場にお出ましになる。臭いで存在を知らしめるカメムシ。彼らとは戦わずに友達になることにした。ああ、いるなと目視する程度の関係で。
ムカデ、クロアリ、ケムシ、ダンゴムシ、ゲジゲジ。。そして蜂は時おり軒下に巣も作る。
どんなに掃除しようとも、ヤツらには敵わない。よかろう!好きにしてケロ!っと、私は匙を投げて、こう思う。
私は自分の所有物としてこの家に住んでいる気になってはいるが、果たしてここは誰のものなのだろう?彼ら小さき者達は、家賃も払わずにのうのうと住んでいるではないか。そして私は、あたかも彼らのシモベのようだ。窓をあけて風を通したり、食べカスを残したり、室温を調節したり。この家の主人は、実は彼らなのかもしれない。。
そんな風に考えてみれば、自分の身体も細菌や微生物達に場を提供する家であるとも言えるのではないか。
我が家のソコココに作られた蜘蛛の巣をとりのぞきながら思う。私の口腔も腸管も皮膚も見知らぬ者たちの痕跡がいたる所にあるのだろうと。預かり知らぬ者達、つまり微生物が、細菌が、今話題のウイルスたちが、ひしめき合って住みついているに違いないのだから。
今回は、微生物たちの働きが我らを助けてくれるということに焦点をあててみたい。
COVID-19にも効果ありとされている発酵食品を作り出す発酵とは?
そしてそこに含まれる酵素とは?
これらについて掘りさげてみたい。
さて、この発酵とは、酵素とは、一体どういうものなのだろう?
ズバリ!発酵とは、ある食品が微生物の力によって別の食品になること。
こうしてできあがった発酵食品には、酵素と呼ばれるタンパク質が含まれている。
酵素とは、細胞がエネルギーを作る、ホルモンを出す、生命活動に関する指令を伝達するといった活動において、さらに栄養の吸収・燃焼・排泄などの分野において、生化学的変化を促進する触媒(仲介役)の働きをするタンパク質なのだ。
ざっくり言ってしまえば、酵素とは仲介役として働くタンパク質のこと。
ここから酵素についての説明を少し。
1 酵素の種類
酵素には、消化酵素と代謝酵素と呼ばれる2種類の体内で作られる酵素(体内酵素)と、食べ物から摂取する食物酵素(体外酵素)とがある。
⒈ 体内酵素
①消化酵素は、食べ物を消化するために必要とされる。デンプンにはアミラーゼ、タンパク質はペプシン、脂肪はリパーゼという酵素で消化されるように、食べ物を食べても消化酵素がなければ栄養として取り込めない。
②代謝酵素には、呼吸・筋肉・細胞分裂、神経の伝達、体温や血圧の調整などをスムーズにさせる働きがある。何かを見ても、香りをかいでも、美味しいものを食べても、神経の伝達があってはじめて視覚に、嗅覚に、味覚に訴えることができるのだ。自律神経による内臓の働きも、筋肉の弛緩と収縮も、呼吸や血圧調整も、つまり生体に必要なあらゆる働きにこの酵素が関わっていると言ってもよい。
⒉ 体外酵素
食物酵素といわれ、ローフード(非加熱の食品や 生の野菜や果物)に含まれる消化酵素のこと。食物に元々備わっている酵素であり、食べるだけで人の酵素として取り込める。(例:早とりしたバナナやアボカドは、時間の経過とともに食べ頃になっていく。このように自然と熟し自ら消化する力が備わっている)
2 酵素の消費
体内で作られる酵素は消化と代謝に分配される。ゆえに消化に使われる酵素量が多くなれば代謝に配分される割合は減少する。少食にすると消化に使われるはずの酵素が少なくなり、その余剰分が代謝に回るので代謝があがるのだ。つまり若返る!あるいは消化を助けてくれる食物酵素を体外から取り入れれば、体内にある消化酵素の浪費が減って代謝力がアップ。代謝があがると、あらゆる生命活動に活力を与えることになる。
3 酵素の特徴
① 触媒の働きをする(注:触媒とは、仲介のこと)。
メシベとオシベとの間を行き交うミツバチが仲介して受粉し、種の存続が成り立つ。このミツバチのように、A + B = C の生化学変化の間(マ)を繋ぐ働きをする。
②およそ5000種類もあるといわれている酵素。そのひとつの酵素は、ある特定の仕事しかしない。ある鍵穴には特定の鍵だけがはまるというように。よって、たった一つの酵素が欠如するだけで病気にもなりうる。それゆえ、酵素ドリンクを作る場合、単体の材料で作るより複数の種類を含む方が、より酵素の力は充実する。
③熱に弱い。酵素が働くのに最適な温度は32℃〜40℃。多くの酵素は45℃を超えるとタンパク質が熱変性をおこし、触媒能力を失うとされる(例外もあり)。それゆえローフードは、食物酵素を壊さずに体内に取り入れることができるために注目されている(注:ローフードに凝ってる人の中には、冷えが体内に入っていて体質に合わない場合もあるので極端な食生活には要注意!)。
④多くの酵素(エンザイム)は補酵素(コエンザイム)という有機化合物(ビタミン類とミネラル類)がないと働かない。またビタミン、ミネラルも酵素がないと働かないという相互依存関係がある。果物や野菜を材料にした手作り酵素ドリンクには、コエンザイムも豊富に含まれているのでオススメ。
⑤消耗品であるため、補充が必要。
つまり酵素とは、
人体の生命活動の間(マ)を繋ぐものであり、
活動のためのエネルギーを作り出す代謝を担っているのだ。
間(マ)を繋ぐものである酵素。
四季折々の食物を材料にして、旬の酵素を作りながら、
私はそこに、微生物から繋がっている自然界の循環する世界を見る。
<おまけ:日本が誇る 発酵食品>
生のカツオにカビ(微生物)が発生してできるカツオ節
ぬか漬け、梅干し、海苔、納豆、魚の干物、昆布、干し椎茸、
醤油、みりん、酢、日本酒、酵素玄米、味噌
海外ではワイン、ヨーグルト、チーズなど。
(後記)
私は、手作り酵素を学びはじめてマル5年がすぎました。この5年間、ほとんど途切れることなく酵素を作り続け、今も教室に通って学んでいます。
正直こんなに作り続けるとは思っていなかった。微生物の世界は一体どうなっているのかという興味に誘われつつ、ただただ面白くて、その上美味しいので酵素を作り続けちゃいました。
外気温や室温といった温度管理はもちろんのこと、保存方法や時間の経過によって味がどんどん変化してしまう酵素。また同じ場所で同じ材料で一緒に作った仲間であっても、一人一人味が違う。
また何度も酵素を作っている場所で作ると美味しくできあがる。これはパンを酵母菌からおこして作るとか、味噌を手作りする場所にも当てはまります。家の中に酵母菌や麹菌が既に住みついていて、協力してくれるのだと。
こう言った微生物の世界は、土の中にもあって、自然界の成り立ちを支え、循環する生命を生み出しているのだと思います。
今の私たちの生活は、
一方で微生物の力を借りて作られる発酵食品を推奨し、酵素を体内に補充して健康を気遣う。
納豆がいいだの、ワインがいいだのと。
その一方で
巷には滅菌された、いつまでも腐らない加工食品があふれ、
我らの身体は、抗生物質によって胃や腸の細菌は撲滅され、
食生活においては、腸内細菌の繁殖に必要な繊維質の摂取は減少しています。
農薬や食品添加物の問題も真面目に議論すらされずに。。
チョイチョイとご都合主義で取り入れられる自然派志向 と アンドロイド的なまでに行き過ぎる潔癖志向。この振れ幅のあまりの大きさにいつも私は戸惑ってしまいますが、こういう割合の上に今の食文化は成り立っているのだと思います。
さらに残念なことに私の世代は、修復不能なまでに自然を壊してしまいました。
次世代の人たちのために私が何かできることがあるとすれば
自然界の一部としての身体を回復することのお手伝いだと思います。
そして私自身も、微生物たちの世界を感じることで、
生命とは何かという問いを考え続けていきたいなぁと思っています。
酵素ジュースの材料の一部。自宅にて撮影。
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