猛暑に見舞われた今年の夏の小樽。秋の紅葉は今年もまた綺麗だろうと期待した。夏の暑さが厳しい年に、木々は綺麗に紅葉すると記憶していたからだ。しかし我が家近隣の紅葉の美しさはイマイチだ。そこで紅葉が美しくなる条件を調べてみた。
夏に十分な日照時間と適度な雨量があり、秋に昼夜の寒暖差が大きいことが決め手となるらしい。
季節に応じた太陽の光・熱・日夜の気温差・湿度といったいくつもの条件が必要なのだ。
さまざまな要素が絡みあいながら時を刻み続ける。ひとつの微細な変化が各要素に波及して更なる変化を絶え間なく生むのだから、秋と言っても一度として同じ秋は来ない。
変わるということ。決して止まることのない流れ。このことは東洋哲学の基本をなしている。
この常に移り変わるということを念頭において、同じく東洋思想の基本である陰陽五行論、とりわけ五行論について、今回はザックリと書いてみたい。
陰陽五行論とは、陰陽論と五行論とが合わさったもの。陰陽論は、古代中国における儒教の経典であり、占いの理論と法則を説いた「易経(えききょう)」という書物の中心思想である。一方五行論は易経より後の時代にできた、中国古代の歴史書である「書経(しょきょう)」の中の思想。この双方が組み合わさって陰陽五行論と呼ばれ、この自然界の成り立ちや変化の法則、あるいは複雑な事象を理解するための方法を説いている。
陰陽論は、ひとつの世界あるいは事象を、陰と陽とに象徴されるエネルギーで理解しようとする試み。陽は太陽であり光、陰は月であり影。つまり物事を光と影との視点から解釈しようとするものである。
陰陽論については、過去記事を参照していただきたい。
陰陽論に対して五行論(五行説ともいう)は、5つの要素に象徴されるエネルギーに基づいて、自然界のあらゆるものを理解しようとする試みと言える。
互いに影響しあう、5つの象徴的要素:木・火・土・金・水(もく・か・ど・ごん・すい)。これら5つの要素は、それぞれ固有の性質を持っている。この5つの要素間での関係性に着目して、様々な現象を読みとく手法が五行論だ。
自然界で目にする木・火・土・金・水。
五行論で重要なのは、実際の木や土や水といった物質ではなく、それぞれの5要素が持つエネルギー(気)に着目するということである(ココ、ポイントです!)。ここでも東洋思想の基本である、気の思想が生きている。モノではなくてキ、物質ではなくてエネルギーにまずは視線が注がれる。
では、それぞれのエネルギーはどのようなものなのだろう。
木:樹木に象徴されるように、伸びやかに上や外へと拡がっていくエネルギー。
火:炎に象徴されるように、熱を帯び上へと向かうエネルギー。
土:大地に象徴されるように、滋養を与え育むエネルギー。
金:金属や鉱物に象徴されるように、重厚で、錬金術の如く変容させるエネルギー。
水:水や川に象徴されるように、潤いを与え冷やしつつ下へと流れるエネルギー。
これら各要素は、助長(相生・ソウセイ)と抑制(相克・ソウコク)という関係の中で互いに影響しあっている。
相生関係とは、木が燃えて火がおこり、火から灰を生じて土となり、土の中には鉱物ができ、鉱物から鉱水を生じて、その水が木を成長させるといった、生み・育てるといった助長させる関係のこと。風が吹けば桶屋が儲かる風な流れだ。この流れは好ましいように思えるかもしれない。しかし、どんどん膨張する循環輪の先に待っているのは爆発。バブル経済がいつかは弾けるように、好循環だけでは世界は成り立たない。
相克関係とは、木は根をはって土を侵食し、土は水を堰き止め、水は火を消し、火は金属を溶かし、金属製の斧は木を斬り倒すといった、抑制し、牽制し合う関係のこと。
これら相生関係と相克関係とがあるからこそ、それぞれの要素が互いに助け合い、あるいは1つの要素のエネルギーが突出しすぎないように歯止めをかけ、総体として調和を保つことができる。ザックリ言うと、それぞれの要素間にアメとムチ、あるいはアクセルとブレーキの関係があり、流れ動く世界の全体的バランスを保っている。
あたかもそれは呼吸しているかのように、吸気時(相生関係)には世界全体が膨らみ呼気時(相克関係)には縮むような生命の息吹きにも似ているように思える。
さて五行論であるが、自然界のあらゆるものが分類できるとされている。ここでは人体に関する例をいくつか取り上げてみたい(下図「五行色体表」を参照)。
上図色体表の具体的な説明については、追って記事にしていきたいと思っているが、少しだけ説明を。
この表に示されるとおり、人体の各内臓はそれぞれ異なったエネルギーを持つことになる(末尾に臓器に関する記事を掲載するので、ご興味ある方は参考に)。
また青春、朱夏、白秋、玄冬(玄は黒の意味)という言葉で表現されるように、ある色と特定の季節には共通するエネルギーがある。
たとえば、青春。つまり青と春は同系列のエネルギーで、ともに伸びやかに広がるパワーを持つ。また青春時代は人生のスパンから見ても春にあたり、若くして躍動しはじめる時期となる。
黄河が流れる中国において、黄は特別な色であり物事の中心をなす意味を持つ。
このように色のエネルギーは季節の特質をも表現している。そしてその季節がめぐり年月が重なって人生となる。人生においても思春期から青年期や壮年期、熟年期から老年期へといったそれぞれの時期もまた、色の持つエネルギーで特徴づけられる。つまり、青(思春期)→赤(青年期)→黄(壮年期)→白(熟年期)→黒(老年期)といった感じで。
さまざまな自然は、その様相を変えながら、めぐる。
めぐりつつ、変化をとげるのだ。
また、こういった五行のエネルギーは日常に入り込んでいるにもかかわらず、
あまりに身近すぎて意識していない。
あるいは意識しないほど当たり前に
すでに我らの生活に組み込まれているのだ。
陰陽論でいうと、
陽は中国語で阳と表記し日(太陽)を表す。
陰は中国語で阴と書き、月を表す。
日と月。さらに五行論の五行である木・火・土・金・水を並べ変えると、
日・月・火・水・木・金・土の1週間となる。
毎日は異なったエネルギーで満たされている。外界は、我らの内奥に通じながら、
今日もまたかけがえない1日がはじまる。
(後記)
前回、五臓六腑の「脾」を記事にして、5つ全ての臓器についてやっと書き終えました。
そしてずーっと書きたかった五行論を記事にすることができて、ホッとしています。
陰陽五行論なんていうと、難しそうに思えるかもしれませんが、身近なところのソコココに案外あるのだよ〜とお伝えできたら嬉しいです。
太平洋に面するエルサルバドルのアカフトラにて撮影
各臓器についてはこちらを参照