“ 伽藍堂 Garaando ”

〜 さかうしけいこ が語る東洋医学の世界 〜

東洋医学各論3 腎

春が来た。(来たの?本当に?異常に寒い。。2019年4月末@東京)

北国では雪がとけ、長い冬を土中で過ごした種子や球根が芽吹いて花を咲かせる季節が、また巡ってきた。

 

さて、このタネのように生命体のエッセンスを内包している臓器が、我らの身体にもあるとしたら?

今回は、人体の臓器についてのお話である。

 

まずは東洋医学でいう「臓器」の概念を少し。。

西洋医学において「臓器」というと、解剖学的な特定の部位を指す。

肝臓、心臓、脾臓、肺(臓)、腎臓といった具合に。

東洋医学でいう肝・心・脾・肺・腎(五臓六腑の五臓)は、解剖学的な臓器を指すのはもちろん、さらに各々の臓器が持つ機能的働きをも含んでいる。

(例:東洋医学でいうところの「腎」は、解剖学上の腎臓のみならず、成長・排泄・生殖といった機能も含まれる)

これは臓象学説とも言われ、古代の解剖知識に加えて、生理・病理の現象を観察した結果生まれた概念でもある。

器という身体の内側(陰)の活動異常は、必ず外側(陽)に現として表れるとし、その関係性に着目した。(例:肝臓が悪いと爪に縦じわがはいる→肝と爪は関連する)

また「人体は小宇宙」と言われるように、宇宙の構造はまるごと人体に反映されているという。それゆえ自然界の構成要素である水や太陽の光がなければ種子が育たないように、人体における構成要素であるところの各臓器は、それぞれにとって必要不可欠であり、部分として切り離すことができない。

このように東洋医学には、臓器や器官は互いに連携しあう上に、心と身体も影響しあって、更に人体内部のみならず外部(自然・家庭・社会)環境とも関係してはじめて、生命活動がなりたっているという視点がある。

(補足: この関係性を特に示しているのが、五行という思想である。古代中国の思想である五行論では、自然界や人体は、「木・火・土・金・水(モク・カ・ド・コン・スイ)」に象徴される5つの要素に分けられる。五臓六腑の五臓の「肝」は木に、「心」は火に、「脾」は土に、「肺」は金に、「腎」は水に相当している。有機体として不断に変化する生命活動において、それぞれの臓器や器官は繋がって影響を与えあっていると考え、それらの間(マ)をつなぐ役割の重要性に着眼したともいえる。)

 

では、本題。

植物のタネに匹敵する臓器。

それは、ソラマメにも似た形の「腎」。

 

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解剖学的な腎臓の形と位置(図はネットから拝借)

 

東洋医学における「腎」は、「先天(センテン)の本(ホン)」と呼ばれ、両親から受け継がれる潜在力を有していて、生命活動のオオモトとなる。

まさに発育と成長、生殖、排泄、老化といった一切の生命活動の基盤となり、その生命エッセンスを凝縮して内臓している臓器といえる。

それゆえ植物でいうならタネであり、地球でいうなら生命が誕生した海である。また種火として腎をとらえるなら、地球の核であるマグマとも言えるのかもしれない。

 

解剖学的に見ると2つある「腎」は、父方、母方のそれぞれを比喩的に表し、その2つの「腎」からエネルギーが流れる下方の真ん中に生殖器がある。

父母から引き継がれ、誕生したこの肉体。さらに自分の「腎」から流れるエネルギーは生殖器を通して次世代へと繋がれ、遺伝情報という形で生命の連鎖が続く。

 

こうして命の根源が「腎」へと受けつがれ、成長・発育を促すのだ。

また泌尿器としても、水分代謝を司り老廃物を出すというデトックス機能によって、生命は維持される。

やがて腎精(腎に宿るエネルギー。詳しくはまたいつか!)が衰えてくると、肉体は老化しはじめ、物忘れ(脳)が増え、骨密度も低下し骨粗鬆症にもなり(骨)、足腰が弱くなる。歯はグラグラし(歯は骨余といい骨の仲間)、白髪になって耳も遠くなる。

排尿・排便困難も起こる(肛門も腎と関連している。臨終期には「腎」の力が失われ、尿も便も出なくなり毒素が全身に回る)。

 

このように人の一生は、タネが発芽して成長し花や実をつけ、次第に枯れて朽ちていくのと同様に、「腎」に統括されているとも言える。

 

そしてそのタネの潜在力や生命エッセンスが十分に生かされるか否かは、環境によるところが大きい。

どんなに立派な種子であっても、水や養分が十分でなければ、発育不全だったり発芽しない。

臓器における環境とは、他の臓器との関係の中でも育まれる。

「腎」に滋養を届けるのは、食物を消化する能力を持つ臓器の「脾」である。(注:脾の概念は西洋医学脾臓と異なる。ここではザックリ消化吸収の働きをする臓器として理解していただきたい)

つまり「腎」の持つ潜在能力は、栄養を消化・吸収する能力のある「脾」の働きに助けられて、花開くのだ。ここに「腎」と「脾」との関係の重要性が見えてくる。

 

 

十分な素質を持って生まれてきているのに、不摂生をして病気を患っている。

本来弱く生まれついているけれども、その潜在力を存分に生かして元気だ。

ほどほどの体力があるので、もっと潜在力があるとは考えたこともない。

胃腸が丈夫で消化能力がもっとあったら、もっといろいろできるのに・・。

メンタル面の影響が大きく、ストレスが腎臓を痛めている。。

 

一体自分は「腎」に授かったポテンシャルをどれほど生かしているのだろうか?

どうなの?

自分のケースを考えてみるが、これがまたなんとも難しい。

 

春蒔きのタネを見かけるにつけ、我が「腎」の働きについて考えてしまうのだ。

 

(おまけ)

腎のセルフケアとしては、なんといっても早寝で上質の睡眠をとり、内向するタネの世界(陰)に戻ることがオススメ。

また腎臓は毛細血管が密集してカタマリとなった臓器。加齢とともに細い血管はどんどんサボっていく傾向にあるので、血行がよくなる状況を作ることが大事。

つまり、腎臓を直接温めること。

オススメは、コンニャク湿布。大きめのコンニャクを7、8分ほど茹でて乾いたタオルで包み、背中から腎臓の部位に当てて温める。これ、とっても気持ちいいので疲れた時に是非お試しあれ!

さらに臨終の方への最後にできる民間療法は、腎臓に手を当てて温めてあげること。

またいつかセルフケアで書けたら!

 

(後記)

ザックリ東洋医学の腎のとらえ方について書いてみました。

「腎」は、尿の濾過・排出に関わっているだけでなく、発育・成長、生殖機能や老化現象とも密接に関連しています。まずはココカラ!

「肝腎カナメ」と言われるように、腎の大切さがわかっていただけたら嬉しいです。

  

 

 

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ベトナム、ダナンにて撮影