“ 伽藍堂 Garaando ”

〜 さかうしけいこ が語る東洋医学の世界 〜

勝手に陰陽論6 更年期

なつかしいネーミング、「イノチのハハA」。

それは、ずいぶん昔にテレビCMから何度も聞こえてきた不思議なヒビキ。

いつ頃からなのか、いつまで聞いていたのかもはっきりしないが、音としてしっかり私の耳に残っている。薬なんだ。。とウスラボンヤリ思っていた。

ラッパのマークの「正露丸」ほど、クスリとしての用途がわかっていたわけではない。

 

さて今回は、

子供時代にボンヤリと聞いていた「イノチのハハA」に関連するお話で、ズバリ!更年期についてお伝えしたい。

 

更年期というと女性特有と思われる方もいらっしゃるのではないかと思うので、ちょっと概要を。

 

東洋医学のバイブルというべき「黄帝内経コウテイダイケイ)」という古典の中の「素問」上古天真論によると、

女性は7年周期、男性は8年周期といった男女異なる生命のリズムがあるとされる。

生命力の決め手である腎精* が健全であれば(*腎精五臓六腑の腎に宿る精のことで、生殖能力も含む。東洋医学では腎は生命力と密接に結びついている。このような五臓特有の概念については別の記事で!)、

女性は14歳(7×2)で初潮を迎え(現在はもっと早い)、28歳(7×4)が全盛期で、49歳(7×7)で閉経となる。

男性は16歳(8×2)から生殖能力がついてきて、32歳(8×4)で全盛となり、56歳(8×7)で喪失するという。

西洋医学においては、女性ならば閉経の、男性なら生殖能力喪失の、それぞれ前後10年間を更年期といい、この変化によって生ずる症状を更年期障害としている。

女性の更年期障害には、顔や身体がホテッて発汗するホットフラッシュ、肩こり、イライラ、のぼせ、不眠、めまい、関節の痛み、不安・抑うつ、動悸・息切れなどがある。

男性においては、男性機能の低下、冷える、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、無気力、不眠、集中力・記憶力の低下、うつ症状などがあげられる。

 

西洋医学において、これらの変化は男女それぞれ特有のホルモン量の減少が原因であるとされ、ホルモン量を測れば歴然と数値に表れる。

さて、この更年期を東洋医学の陰陽論でひもとくと、どういうことなのだろうか。

 

陰陽論において、陰は中国語で阴 yin と表記されるように月に象徴され、内に向かって集まって量的なエネルギーを持つ。陽は中国語で阳 yang と表されるとおり、お日さまである太陽に象徴されて、外に向かって広がる動的な力を持つ。

それゆえ、内(家庭)に向かい育むエネルギーであり、月のリズムに影響される女性は陰に、外(社会)に向かい活動するエネルギーの男性は陽に分類される。 

 

男性か女性かといういずれかの性をとりあげた場合(注:LGBTなどいずれかに割り切れない場合もあり、性について一般論で語るのは大変難しいのですが、便宜上このようにさせていただきました)、 

陰である女性の中にも男性性(陽)と女性性(陰)があり、

陽である男性の中にも同様にそれぞれを有する。

(注:「陰陽可分」といい、陰陽それぞれはさらに陰陽に分けられます。例:男性ホルモンとの対比において陰となる女性ホルモン。その女性ホルモンを更によくみてみると、エストロゲン(陰)とプロゲステロン(陽)に分けられる)

 

<女性:陰> 

女性を陰陽の割合でみてみると、

女性の陰がしめる割合は、陽のそれより大きい。

陰は寒を、陽は熱を表すため、

一般に女性は冷え症になりやすく、

体温は男性に比べて低い。(参照:下図左側)  

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陰がまさっている       陰が減り陽は同じなのに相

ため、寒く感じる       対的に暑く感じる (  虚熱  )

それが更年期にさしかかり(参照:上図→の部分)

陰が徐々に減少し、ついには陽の割合よりも少なくなる(個人差あり)。

陽は以前に比べて増えてはいないのに、

陰が減ることにより相対的に陽が多くなってしまう。(参照:上図右側)

そのため更年期を迎えた女性は、ホットフラッシュというところの、

いきなり汗をダラダラかくという症状に見舞われ、以前ほど寒さを感じなくなる。

この暑さを、中医学では「虚熱」(陰が少なくなり[虚になる]、相対として陽がマサルために生ずる熱)という。

また陰のもつ、内に向かう求心力。これが減ったために、陽の広がるエネルギーを抑えきることができなくなる。陽の力は上へのぼり、顔を火照らせ、のぼせさせ、時には目眩をも起こさせる。 

 

<男性:陽>

 一般に男性が女性よりも体温が高いのは、陽(熱)がモトモト、マサっているから。

この陽が陰より多いために発生する熱を「実熱(実=過剰にあるという意味)」と中医学ではいう。(参照:下図左側) 

(注:「虚」と「実」という概念は、東洋医学中医学において大切なものです。「虚」はウツロで少ない、「実」は過剰で多いという意味でとらえてください。)  

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陽がまさっているため            陽が減り陰は同じなのに相

暑く感じる ( 実熱 )     対的に寒く感じる 

それが更年期を迎えると(参照:上図→部分)

持ち前だったはずの陽は衰え、陰よりも減少することもあり、

相対的に陰が陽より大きくなる(個人差あり)。(参照:上図右側)

そのため今まで、あまり感じなかったかもしれない冷えを感じ、

年齢を重ねるにつれて寒さに敏感になる。

 

このように更年期になると、女性にはホットフラッシュという暑くなる症状がみられ、男性には寒さに敏感になるといった変化がみられる。そしてこれは、陰陽のバランスの変動が原因となっているのだ。

 

また男女とも更年期を経てからの身体全体のエネルギー量は、小さくなる(上記のそれぞれの図参照)。

 

それゆえ

他人から見える自分の外見も変わるだろう。

また

自分が物事をみつめる目線の高さも変わり、

同じはずの風景が違って感じられたり、

あるいは

今まで気づかなかった事柄が見えてくるのではないかと思う。

 

時々思う。

我らは、肉体という乗り物を借りて旅するのだと。

現実に外の国々へと飛びだして、冒険することもできる。

また自分の肉体の変化を感じて、内側へと向かい、陰と陽との間(ハザマ)にある  たゆとう 世界へと降りていくこともできるのだ。

そしてそこには、まだ見知らぬ自分がいる。

 

更年期は、微妙に変わりゆく相対の世界を体感し、自然の摂理を味わうチャンスにもなると思うのだ。

 

  

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ユカタン半島にて午後2時のカリブ海を撮影

 

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午後5時の同所にて撮影