“ 伽藍堂 Garaando ”

〜 さかうしけいこ が語る東洋医学の世界 〜

東洋医学概論7 中医学と東洋医学

漢字は、モノの形をまねて作られた象形文字だという。

「中」という文字は、放たれた矢が当たるべき的(マト)をかたどって生まれた。真ん中を射抜くためのマトを表す。訓読みでは「アたる」と発音する。(注:旗竿の吹流しを描いた象形文字という説が主流)

10年ほど前、世界的に有名な鍼の先生が来日し、私はそのセミナーに参加した。頭に鍼をすることによって、脳血管障害や脊髄損傷に伴う麻痺が劇的に改善されるという頭皮鍼を学ぶためだ。このセミナーの冒頭に先生がおっしゃった言葉に、私はビックリした。

中医学」の意味は、「中」という漢字の形からもわかるように、ど真ん中の医学という意味。中国の医学ということではないアルよ・・。

中国が中国という国名になったのは1900年代半ばで、それ以前は清だったりするわけで。。

つまり、中医学の本当の意味は、アタリの医学、医学の王道!ってことだ・・。

このような事をおっしゃった。

今まで中医学といえば、てっきり中国の医学という意味だと思っていた。またどの本を見ても「中国の伝統医学を中医学と呼ぶ」と書いてあったはずだ。ま、諸説あるのだろうと思いつつも私の記憶に残った話だった。

 

そのアタリの医学?!とも言われる中医学。この発展の歴史をふまえつつ、今回は東洋医学の全体像をお伝えしたい。

 

ひとくちに東洋医学といっても、広い意味(広義)と狭い意味(狭義)がある。

広義には、トルコ以東のアジア諸国で発達した医療システム全般をいい、中国伝統医学(中医学)やインドのアーユルヴェーダパキスタンのユナニ医学など多様な伝統医学が含まれる。

狭義では、中国の自然哲学である陰陽五行論、これを基軸に展開された医療体系をさす。つまり、中医学を筆頭に、中国から伝わって独自に展開された韓国の韓医学、そして日本の漢方といった東アジアの伝統医学をいう。

(注:日本で独自に発展した医学を漢方という。漢方というと薬を連想するが、16世紀半ばにオランダ医学が伝わって、日本の医学を漢方、西洋医学を蘭方と呼んだ。日本では3世紀頃から朝鮮半島の医術が、7世紀頃から中国大陸の医学が伝わっていたとされる。それらが16世紀頃から日本固有の形で発展。この伝承医学が明治時代までは日本の医療の主流であった。)

一般に西洋医学との対比として東洋医学という場合、中国伝統医学である中医学を中心とした狭義の意味合いで使われる。

さて、世界中のさまざまな伝統医学の中でも、理論的な体系が備わっているとされる中医学

それは数千年の歴史の中で、どんな発達をとげたのだろうか。

中国には約2400年前にできた世界最古の医学書がある。中国全土にわたる医術をまとめた「黄帝内経コウテイダイケイ)」と呼ばれるものだ。これには人体の生理、解剖、病理といった基礎医学をはじめ、中国各地に広がっていた医術(養生や鍼灸)についても書かれている。

これらの医術は、その風土や気候、食生活といった固有の環境のもとで発達していった。

東方は、海岸に面しており、海の幸に恵まれた食文化となる。治療は砭石(ヘンセキ)と呼ばれる石の鍼を使う医術が発達した。現在のカッサ療法(牛のツノからできたプレートを用いて人体をマッサージする方法)のルーツでもある。

西方は、漢方の材料が採取しやすい高原や丘陵地域があり、薬物療法が発展した。

高温多湿である南方では、熱や湿度を散らし、痙攣などを鎮める鍼治療が盛んになる。

寒冷地が多い北方では、身体を温めるお灸が発達した。

中央では、大地が広がり人々は粗食で労働しないため、導引按蹻(ドウインアンキョウ)とよばれる養生法が盛んとなる。これは気功や按摩などをいう。

      中国の地域における医術の発達と背景

 

こうして中医学は、鍼や灸を使う物理療法、漢方薬薬物療法、そして養生(運動療法を含む)が組み合わさった体系を作りあげたのだ。

 

鍼灸漢方薬と気功やあん摩といった方法で、

病いが目にみえる形となる前から、全方位で健康を支える。

 

不断に変わりゆく生命体を、

時に応じて種々の術(すべ)を使いわけ、

左右に揺れる振り子が健康の閾値を超えないようにと、収める。

あるいは左右どちらかに振り切れないようにと、中庸を求める。

 

この全体をみすえた骨組みは、確かにアタリなのかもしれない。

 

(後記)

このところ、ウクライナの歴史をちょっと勉強しています。そんな中で、私にも理解しやすい地政学についての本に出会いました。「13歳からの地政学」(田中孝幸著、東洋経済新報社)です。

この本を見ていたら、なんだか頭から地図が離れません。そして私も地図を書いちゃいました。

ああ!それにしても、知らないことだらけです。

そして歴史って、物事を理解するうえで、つくづく大事なんだなぁっと思っています。

このような流れをうけて、中医学の歴史を題材にしました。

 

本来ならばもっと前に説明すべき東洋医学の概説です。

中医学東洋医学

ブログ記事でもこの用語の使い分けの説明ができておらず、いつも気になっていました。

書きおえて、ちょっとだけホッとしています。

 

 

1986年の中国。山西省の九龍壁。名所の真ん中で、お漏らしして泣いてる子を撮影